2006年02月09日

[書評]野ブタ。をプロデュース

記念すべき書評第一回目は、昨年ドラマでスマッシュヒットを飛ばした本作。
ま、ドラマとしては大変アレだったわけですけど、楽曲など含めていろいろ売れたしね、ってことで。

学生ヒエラルキーにおけるエネルギー保存の法則
あるいは、
「最近コムロもつんくも本人見なくねぇ?」


文藝賞受賞作にして、芥川賞男性最年少受賞の期待もかかった本作。

4309016839野ブタ。をプロデュース
白岩 玄

河出書房新社 2004-11-20
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あらすじとしては、こんな感じ。

冷めた目線で自らと周りの人間を見つめながらも、クラスの人気者を「演じている」桐谷は、いじめられっこの転校生「信太」(野ブタ)をいじめられキャラの人気者へと仕立て上げていく。
彼のアイディアは次々と当たり、野ブタは次第にクラスの輪に溶け込んでいった。
だが、プロデュースも完成間近というところで、ある事件がきっかけになって桐谷自身がクラスから排斥される立場になってしまうのだった。

軽妙な語り口で、「That's 学生生活」ともいえる桐谷の生活を描いていて、気持ちよく読み進められる。

また、「自分は他とは違う」なんて考えは、特殊なようで実は陳腐。正常な男子中高生は結構誰もが考えていることだ。
だから平凡(に見える)な親に反発する。
俺はそうじゃない、と。

そう考えていくと、実は主人公の感性を表現しているように見えて、学生全般が共有する悩みをきちんと描いている。
すごい力だ。

途中で出てくる「(笑)」なんかを嫌がる人が多いみたいだけど、あれはあれでいいんじゃないだろうか?
ケータイ(電話ではなくメール)世代の一人称。おそらくは小説然とした文字よりも、液晶の中にしかない表現のほうに親しみがあるはず。そうした世代の一人語りなわけで、むしろ当然ともいうべき表現だと思う。実に今っぽい(って俺もそう年齢変わんないんだけど)。
計算して書いていたんだとしたらたいしたものじゃないかなぁ。

そういえば、同じ文藝賞受賞作の「インストール」(綿谷りさ)でも、作中の「(苦笑)」が話題になったことがあったはず。
文藝賞受賞作はこの2作しか読んでいないんだけど、賞全体の傾向なんだろうか?

残念に思うのは、桐谷の凋落の原因となった事件そのものには、野ブタが直接的には絡んでこないということだ。
一人を上げれば一人が下がる構図なので、人気者になった野ブタとの関わりの中で、自然に彼の素の部分が出てきてしまい、まわりが引いていく、っていう展開のほうがよりドラマティックになるんじゃないだろうか。

プロデュースに専念しすぎて、メッキがはがれていたことに気づかなかった、事件がきっかけではがれた部分から一気に積み上げたものがくずれた、というのはやや弱い気がする。個人的にだけど。

とはいえ、かなり面白くお勧めできる本。
値段も手ごろなので、ちょっとした片手間に読んでみて欲しい。

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posted by SEEK-STYLE.NET at 00:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評】その他
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