2006年02月20日

[書評]密室の鍵貸します

ストライクゾーンからストライクゾーンに切れ込む
鋭いシュートだ


冒頭の文は本書(正確には初出のKAPPA−ONEの)の後書きに有栖川有栖氏が寄せた一文だ。

密室の鍵貸します密室の鍵貸します
東川 篤哉

光文社 2006-02-09
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全くこの作品は本格という「ストライクゾーン」から抜け出すことなく、よく「切れ込」んで読者を幻惑している。

舞台からしてアヤシサが漂う。
その名もずばり烏賊川市(いかがわし)。う〜んなんてイカガワシイ…
この、名前こそイカガワシイ−しかし内実はどこにでもある平凡な地方の−街で起こる二件の殺人事件に巻き込まれる映画学科の大学生・戸村流平が本書の主人公。
彼はある日、突拍子もない事件に遭遇し、義兄である私立探偵・鵜飼杜夫に助けを求める。彼等を追うのは烏賊川市警の警部・砂川とその部下・志木。
この二組四名が(有栖川氏に対抗するつもりもないが、サッカーファンにしかわからない例えで)ツルベの動きで謎に挑むのが本書の骨子だ。
語り手はいわゆる「神の視点」(わざわざ注意書きする理由は読んで頂ければわかる)。

それにしてもこの神が厄介者だ。
作品冒頭でこんなにも読者を馬鹿にしているかのような舞台を説明するものだから、読み手としてはどうしても斜に構える。いわば初球の内角高めでバッターの意識に「ユーモア」を植え付けてしまうリードの如く効いてくる。

そこに投げ込むのが鋭く曲がる、しかし本格の枠を一歩も踏み越えないユーモアたっぷりのシュートなのだから読者は翻弄され、どうにか立てた推理も次の瞬間にはショートストップのグラブの中という具合だ。

さて、トータルで感想を述べるのならば、まず「神」に操られたツルベの二組が最終的に見出だす真相が意外性に溢れていて面白い。しかし、それ以上に作品全体に流れる空気と、それを体現しているキャラクターの立ち居振る舞いが面白いと言える。
作者の他の作品にも彼等が登場するという。是非それらを読んでみたいと感じた。

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posted by SEEK-STYLE.NET at 21:11 | Comment(1) | TrackBack(1) | 【書評】ミステリ
この記事へのコメント
こんにちは。TBありがとうございました!

サッカーが全くわからないものです(笑)
烏賊川市にやたら笑ってしまいました。
でも、主人公と探偵に今のところあまり魅力を感じられなくて、自分の評価は微妙です。。
とりあえず、私も他の作品にも彼らが登場するということで、読んでみようと思います。

TBさせていただきます。
では
Posted by ことは at 2006年02月20日 23:36
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