2006年02月25日

[書評]スポーツドクター

厳しいようですが、言うときには言わなければなりません

本格ミステリを連続で取り上げたので、今回は毛色を変えてスポーツ青春ものについて書いてみたい。

スポーツドクタースポーツドクター
松樹 剛史

集英社 2005-10-20
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前作『ジョッキー』でも感じたことだが、この作者はスポーツの現場を題材としてとりあげ、リアリティをもたせつつ気軽な読み物として仕上げるのが非常にうまい。
スポーツノベルには重苦しいテーマの作品も多く、最近いい書き手がいなかったのだが、この作者の二作はどちらもすんなりと、かつ楽しく読ませてもらった。

本作は四章構成の連作短編である。それぞれの章の簡単な内容は以下の通り。

第一章
バスケ部キャプテンの女子高生・岡島夏希は、練習中に幼なじみの幸を巻き込んで転倒してしまう。責任を感じた夏希は、幸に同行して最近できた「靫矢スポーツクリニック」を訪れる。

第二章
靫矢スポーツクリニックでアルバイト(ただしバイト代は昼食の現物支給)を始めた夏希。
夕暮れのクリニックに、親子連れの患者が訪れた。リトルリーグに所属する息子が、大会を前に肘を故障したのだという。
靫矢は、彼の症状や練習風景を観察し、日本の少年スポーツが抱える問題点を指摘する。

第三章
クリニックにタイムが伸び悩んでいる水泳選手が来患した。
だが彼女の体には、周囲が心配するような異常はみつからない。問題の鍵は香水とガムの香り。
夏希を通して彼女の日常を観察した靫矢は、トップレベルの女子アスリートに特に顕著な障害を疑った。

第四章
クリニックにやってきたのは女性スポーツライター・小林江。
靫矢と以前から関係があるらしい彼女。突然靫矢を連れ出してしまった。
彼女の取材対象は以前に縁のあったスイミングクラブのある選手。
近代スポーツを蝕む問題点とは。

基本的に、各章それぞれにゲストキャラのような形で患者が現れる(そして第一章のゲストキャラである夏希は本編を通しての主人公である)という構成をとっている。
彼らをスポーツドクターである靫矢がさまざまな観察を通して治療していくのが本筋。
その中でもキャラクタごとのつながり重視した連続作、それぞれの個性を描き分ける単発作といろいろな要素が含まれて【一気読み】が可能な作品に仕上がっている。

スポーツドクターという存在も今では身近になったが、その仕事内容はやはり一般の人にはあまり知られていない。
本作では、解説で現役のスポーツドクターである辻秀一氏が「なんとリアル!」と書いてしまうほど現場を描ききっている。そのリアルさは、辻氏が小説中の描写だけで患者の故障箇所を診断できてしまうほど。
それだけ【本当にある】状況を描いているのだ。

読後感も青春小説らしくさわやかで、暖かい作品を読んでみたい人は是非手に取っていただきたい。

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posted by SEEK-STYLE.NET at 03:58 | Comment(1) | TrackBack(2) | 【書評】その他
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
確かに,これほど軽く読めるスポーツものって,そう見ませんね。根性ものでも,ストイックな舞台裏でもない。「ジョッキー」でもそうでしたが,主人公がトップレベルでないからできるものかもしれません。
次回作,いつ出るかなぁー。
Posted by たつパパ at 2006年02月25日 08:19
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松樹剛史「スポーツドクター」
Excerpt: 前回読んだ本があまりにも重たく,文字通り血生臭い作品だっただけに,次はさらっと読めるものが欲しいと思っていました。そこに来た一服の清涼剤。主人公の名前と同じ「なっちゃん」のような,すっきりとした口当た..
Weblog: たつパパ★南北線
Tracked: 2006-02-25 08:19

『スポーツドクター』
Excerpt: スポーツドクター 松樹剛史 / 集英社 手ばなせない度 : ★★☆☆☆ ライトノベルみたいな表紙に衝動買い。  ちょっと検索してみたらこちらのような評価が。内容も、そちら読めばだいたい分かる..
Weblog: 白猫宮
Tracked: 2006-02-25 21:27
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